戸祭小の自然観察

生きもの図鑑

青くさい香り

 観察をするときは,目で詳しく見るだけでなく,危険でなければ触れたり,においをかいだり,音や声を聞いたり,大きさを計測したり,時には味わってみたりと感覚をフルに使って「みる」ことが大切です。
 今回は,画像や言葉では伝わらないにおいに特徴がある草本です。以前,ハーブ類の紹介をしました。シソ科の植物は大体,葉や茎に香りがあり,それを人々は利用してきました。下の写真は,ムラサキ科のキュウリグサ(Trigonotis peduncularis)です。
名前の由来は,葉をもむときゅうりのような青くさいかおりがすることからきています。オオイヌノフグリのような青い花で,大きさは3~5㎜でとても小さいです。中庭や多目的室北側など,いろいろな場所で雑草化しています。見つけたらぜひ,葉を採って香りを体感してみてください。

  

わたしたちの県の木

 中庭の東通路わきに大きな葉をもつ背の高い木樹木があります。栃木県の名前にもあるトチノキ(Aesculus turbinata)です。花が塔(とう)が立つように咲きます。クリーム色の花が咲いていますが,宇都宮市の街路樹の中には赤い花を咲かせるトチノキもあり,ベニバナトチノキと言います。
   
 花から蜂蜜を取ることが多く,栃木県庁では数年前トチノキの蜂蜜を作るプロジェクトを行っていました。また,夏に実るトチの実は栗のような光沢があり,しぶ抜きをしてとちもちにして食べられます。小学3年生の国語で学習した「モチモチの木」とはまさにこの木のことで,「モチモチ」とはとちもちを作ることからきています。
 栃木県のゆるキャラである「とちまるくん」の頭は,このトチの実の形で,実の切れこみのような部分も表現されています。トチの葉がリボンのようについていて栃木県のマスコットとして活躍しています。
 秋には葉を落とす落葉樹ですが,すでに来年芽生える冬芽ができています。この冬芽には特徴があり,あめのようにねばねばした液でおおわれています。
  

似ている植物 パート2

 以前,ヒメオドリコソウとホトケノザが似ていることを紹介しましたが,今日はさらに見分けがつけにくい花です。中庭に紫色の小さな花が地をはうように咲いています。花の形はヒメオドリコソウやホトケノザのような形ですが…
  
 もっと近くで見てみましょう。何となく花の違いが分かりますか?
  
 左側の写真は,カキドオシ(Glechoma hederacea subsp. grandis)というシソ科の植物です。葉が円く,硬貨のような形なので連銭草(れんせんそう)という別名もあります。シソの仲間らしく葉をもむと香ります。乾燥させて漢方薬にもするそうです。   
 右側の写真は,ムラサキサギゴケ(Mazus miquelii)というハエドクソウ科の植物です。花の中心に黄色い模様があります。

白い飾りのような花

 中庭の西はしに通路にかかるほど大きな木があります。ミズキ(Cornus controversa)という樹木です。春に小さな花が集まるように咲き,黒っぽい実がなります。
   
 名前の由来は,枝を切ると水がしたたり落ちるように出ることからだそうです。樹木の水の吸い上げがとても強いことから,そのようになるのでしょう。
 また,木工製品の材料としても使われ,代表的なものは,宮城県鳴子の民芸品のこけしだそうです。

開いたり 閉じたり

    カタバミ(Oxalis corniculata)
  
 校庭のすみの所にあざやかな黄色い花が咲いています。葉はハートのような形をしていてクローバーに似ています。日本の名前(和名と言います)葉が欠けたように見えることから,片喰(かたばみ)と名付けられたそうです。葉の色が赤いアカカタバミ(Oxalis corniculata. f. rubrifolia)など種類も多いです。
 このカタバミは,昼間(晴れている日)と夜間(雨やくもりの日)で様子が違います。花や葉が開いたり閉じたりします(下写真)。就眠運動(しゅうみんうんどう)と言って,光などの刺激により,花や葉の根元の部分がふくらんだりちぢんだりして動きます。その運動の代表例が,触った刺激によって葉が閉じるオジギソウです。
          
 しぶとい雑草ですが,葉にはすっぱい成分(酸)があり,よごれた(さびた)10円玉にこすりつけると,よごれが落ちます。また,漢方薬としても利用されます。
 カタバミを食用としているチョウの幼虫もいます。水色でシジミ貝のように小さいシジミチョウの仲間のヤマトシジミ(画像がないので図鑑で見てください!)です。3年生の理科で学習したモンシロチョウはアブラナ科の葉,アゲハチョウはかんきつ類等の葉,国蝶に指定されているオオムラサキはエノキの葉といったように,種類によって植物が違います。進化の過程で食用にする植物が分かれることで,チョウ同士が競い合うことなく食物を得られるので,そのチョウの種類が続くことになります。

食べられる?

 
 中庭にイチゴが実りました。とは言っても,1cmに満たない小さなイチゴです。ヘビイチゴ(Potentilla hebiichigoYonek. et H.Ohashi)と言います。名前から「ヘビが食べるイチゴ」とか「毒があるイチゴ」とか言われますが,ヘビが食べるわけではないし,毒があるわけではありません。ただ,人が食べてもおいしいとは感じません。表面のつぶつぶは,種子です。イチゴ類は実ではなく,花が咲いたあとに残る花托(かたく)が大きくなったもので偽果(ぎか)という分類に入ります。
 花は黄色く,5枚の花弁がプロペラのように並んでいます。また,茎を長く伸ばし地面をはうように広がります。
  

          

ハナミズキ

ハナミズキ(Cornus florida
   
 アメリカから送られたので,アメリカハナミズキとも言われます。また,似たような種類でヤマボウシ(中庭にあります。過去の「戸祭小の自然観察」参照)があり,アメリカヤマボウシとも言われます。街路樹にも使われ,きれいです。色がきれいな部分は実は,花びら(花弁)ではありません。植物学的に言うと,総苞片(そうほうへん)という部分で,葉が変形したものだそうです。花は中心に固まっている部分です。草本のドクダミなどもこの総苞片が花のように見えます。
 戸祭小はキンモクセイの隣と西門にふちがピンクで白色のものが,玄関前に赤いもの,中庭にピンク色のものが咲く樹木があります。楕円形の赤く硬い実がなります。
    
 ミズキという種類の樹木があり(中庭にあるので後で紹介します),木を切ると水がしたたるように出てくることからこの名前がついたそうです。 

長持ちする花

 花壇に植えてあるパンジー(Viola × wittrockiana)です。サンシキスミレとも言うことがあります。また,小ぶりの花がいくつかつく種類をビオラということもありますが,区別が難しいです。それは,たくさんの品種改良がされているからです。
 花もちがよく,校庭のパンジーは昨年度に栽培委員会の子どもたちが植え替えてからずっと咲いています。このパンシーの苗は,宇都宮白楊高校の生徒たちが育てた物です。白楊高は農業系の科もあり,園芸の実習をしています。
 校内のパンジーの花の色は何種類あるのでしょうか?まだまだ花が見られますので,学校に登校した時に調べてみましょう。
  
 
  

王者の印

 西門の所にたくさん黄色い花をつけた樹木(じゅもく)があります。葉は一年中緑色をしています。そのような樹木の仲間を常緑樹(じょうりょくじゅ)と言います。常緑樹以外の物は,紅葉したり葉を落とすので落葉樹(らくようじゅ)という仲間になります。
 さて,この常緑樹はギリシャ神話のアポロンの木とされていて,昔から競技の勝利者にはこの樹木の葉で作られた冠(かんむり)がかぶせられます。マラソン大会などで優勝者が頭につけてインタビューを受ける姿を見たことがあるかもしれません。ゲッケイジュ(Laurus nobilis)という樹木です。ツバキやキンモクセイのように,葉が寒さにも耐えられるよう厚手になっていて照葉樹という仲間分けもされます。
      
 ゲッケイジュの葉は,乾燥させるとよい香りがするため料理の香辛料に使われます。ローリエ(ローレル)と呼ばれて売られています。
          
 雄花が咲く樹木と雌花が咲く樹木があり,両方の樹木がないと受粉できないため,なかなか実を見る機会が少ないです。戸祭小は雄花が咲く木です。
    
 また,幹(樹木の根元から出ている太い部分)の表面(樹皮:「じゅひ」と言います)はざらざらしています。樹皮の特徴(とくちょう)で樹木を調べることもできます。樹皮に紙を当てて,鉛筆やクレヨンなどでこすってみると模様が写しとれるフロッタージュを使って記録するのもよいです。
          

クローバー

 「四つ葉を見つけると幸せになれる」そんな言い伝えがあり,探し回った人も多いのではないでしょうか?日本語の名前(和名)はシロツメクサ(Trifolium repens)と言い,白い花が咲きます。「ツメクサ」は,外国からガラス製品を運んでくる際に割れてしまわないように周りにつめるために使われた草という意味です。今では,ビニルのエアクッションなどが使われています。
 この草は,シバのように地面をおおうように生えるため,庭のグランドカバーとしても植えられます。ゲンゲと同じくマメ科の植物で,根には根粒菌があるため土の窒素(ちっそ)分として有用です。似た種類にムラサキツメクサ(アカツメクサ:Trifolium pratense)という草があります。
         
 さて,せっかく見つけた四つ葉のクローバーをとっておきたいですが,数日でしおれてしまいます。そこで押し葉にして保存しましょう。博物館などで保管されているものも押し葉であり,乾燥標本と言います。簡単に押し葉にする方法を教えます。
 まず,ティッシュの上にのせて形を整えます。そして,上にもう一枚ティッシュをかぶせます。次に,新聞紙など水分を吸い取る紙で上下をはさみ,平らな所に置きます。最後に重しとして,本を数冊重ねておきます。2,3日でアイロンをかけたようにきれいな押し葉ができます。ちなみに,花でもできます。完成したら,画用紙等硬い紙に貼って保存するとよいです。ラミネートができるならしておくとよいです。下の写真は,ラミネートしてしおりにしたものです。