戸祭小の自然観察

生きもの図鑑

ヤシの木?

 中庭に木のように見えない植物があります。木の幹の部分は毛のようなものでおおわれていて,一番上にうちわの骨組みのような大きな葉がついています。高さは6mを越えるほど高い木です。


 シュロ(Trachycarpus シュロ属)の木です。南国によく植えられるヤシの仲間なので,似た形をしています。皮の部分(樹皮:じゅひ)はネットのようになっていて,はがして排水溝のごみ取りに利用したり,あんでシュロ縄にしたり,ほうきの毛の部分に使ったりします。葉の根元に花が咲きます。

 
 シュロには,ワジュロ(和棕櫚)とトウジュロ(唐棕櫚)があり,2つの雑種をアイジュロ(合棕櫚)というそうです。見分け方は,葉が垂れ下がるのがワジュロ,垂れ下がらないのがトウジュロ,その中間がアイジュロだそうですが,中庭にあるシュロはアイジュロのようです。

ハルジオンとヒメジョオン(似ている植物パート5)

 ハルジオンが咲き終わり,中庭の草が刈り取られました。その後,再びハルジオンそっくりな草が生えてきました。ヒメジョオン(Erigeron annuus)という植物です。

 
 漢字で書くとハルジオンは春紫苑,ヒメジョオンは姫女苑です。両方とも紫苑(シオン)ですが,ヒメシオンという別の植物があり,区別するためあえてジョオンと呼ぶようになったそうです。
 花を見ただけでは区別がつきにくいですが,くきの中や葉の付き方にそれぞれ特徴があるので,見分けてみましょう。ハルジオンは,くきの中が空っぽで葉は茎を包むようにつきます。ヒメジョオンは,くきの中がつまっていて葉はくきを包みこまずにつきます。見分け方は,小学3年の理科の教科書にも載っていますので,見てみましょう。


ハルジオンのくきの内部


ヒメジョオンのくきの内部

中庭の池

 臨時休校も終わりを迎え,6月からは通常登校になります。休校中,平日の毎日戸祭小の自然をお伝えしてきましたが,6月からは不定期になります。しかし,戸祭小の自然の様子をできる限りたくさんお伝えしたいと思います。

 5月最後は,池の中にピンク色のスイレン(属名:Nymphaea)が咲き始めたので紹介します。根が水中にあり,葉が水面に浮かんでいます。花は造花をのような整った形です。花が開いたり閉じたりを繰り返すため,睡眠をとるかのような蓮「睡蓮(すいれん)」と呼ばれています。
 ハスとは違い,根を食用(蓮根:れんこん)にすることはありません。メダカなど魚と一緒に育てると池の水もきれいに保つことができ,スイレンが育ちやすい環境になります。また,魚をねらって鳥類も飛んできます。陸上だけでなく水辺の環境もある戸祭小の校庭は,自然観察が楽しめる所です。ぜひ,観察をしてみてください。
 

 

バタフライガーデン

 成虫が蜜を吸うための花や幼虫のエサとなる食草がたくさんあれば,校庭にチョウを呼び寄せることができます。チョウを集めるために植物を植えた庭をバタフライガーデンと言います。小学3年生は理科でチョウについての学習がありますから,実物を見たりふれたりしながら育てる体験をさせてあげたいので,毎年校庭にチョウがいないと困ります。そこで,戸祭小の中庭もバタフライガーデンにしようと整備しています。

 たくさんの花はもちろんのこと,ヤマトシジミが食べるカタバミやモンシロチョウのアブラナ科植物,アゲハのかんきつ類の樹木などがあります。カタバミは雑草化していますし,先日紹介したアブラナやムラサキハナナ,3年生の教材園にはコマツナやキャベツ,樹木としてミカンやサンショウを植えています。これからチョウの舞う中庭になると思います。

 


サンショウ


ミカン


コマツナとキャベツ

ぺんぺん草

 雑草でも私たちに親しまれている種類があります。その中の一つである
ナズナ(Capsella bursa-pastoris)は,七草がゆの一つの具として有名です。七草がゆは,正月を過ぎ,ごちそうを食べた胃を休めるため人日の節句である1月7日に食べる習慣になっているようです。同じアブラナ科のタネツケバナ(Cardamine scutata)と間違えやすいですが,ナズナは「ぺんぺん草」と呼ばれるように,三味線のばちに似た実の形に特徴があるので,見分けがつきます。

ナズナ


マメグンバイナズナ
 ナズナの実の部分をさくようにしてふって音を出すいう遊びもあり,とても親しみやすい雑草です。似た植物でマメグンバイナズナ(Lepidium virginicum)というのもあります。

ポ・テ・ト

       
 6年生と給食委員会の教材園では,つぼみをもった植物が育っています。使う部分は地上部でなく土の中です。これはジャガイモ(Solanum tuberosum L. )です。名前の由来は,ジャワのジャガトラ(ジャカルタ)から伝わったいもということで,ジャガタラいもがジャガイモと変化したという説があります。
 すでに花が咲き,花の後には実がなることがあるのですが,この実は食用にしませ
ん。どんな実になるかは,できたとき見てください。ただ,ジャガイモはナス科の植物なので,大体の想像はできます。
 いもとして養分(でんぷん)をたくわえている部分が食用で,馬鈴薯(ばれいしょ)という品種のでんぷんを「片栗粉」として売っています。元々は春先に林の中に咲くカタクリの根からとったでんぷんが片栗粉なのですが,たくさんとるのが大変なため代用しています。ちなみに,ジャガイモのいもは植物体の部分で言うと茎になります。葉の光合成で作られたでんぷんをたくわえて茎が肥大化したものがジャガイモです。
       

青葉の校庭

 今日は,春から大分様子が変化した校庭のサクラの様子をお知らせします。
 木々が葉をたくさん茂らし,すっかり青葉となっています。
  3月下旬  
   まだ開花宣言が出ていない頃 つぼみがついてうっすらと木が赤く見えます。
  4月上旬 
   よく日の当たる暖かい所から開花していきました。                      
  4月上旬 
   ほぼ満開です。
  4月上旬 
   満開を過ぎ,花びらが散り始めています。風が吹くと一斉に花びらが
   舞います。
  4月中旬 
   花びらはすっかり散ってしまいました。赤く残るのはしべを含めた花柄です。
  5月上旬 
   ソメイヨシノは,花の後に葉が出ます。青葉で覆いつくされています。
   
      花びらが散った後        葉がきれいに開いています
       
         ソメイヨシノのさくらんぼ
   花の時期には,ウグイスやヒヨドリ,ムクドリなどの鳥類がひっきりなしに飛
  んできていました。また葉が生い茂り始めてからは,スズメやカラス,カッコウ
  などが飛んで来ています。植物と動物の関係も調べてみましょう。

新種のタンポポ?(似ている植物パート4)

 「タンポポがたくさん咲いている!」
 そんな声が聞こえてきそうな様子ですが,近くに寄って見てみるとタンポポより細身です。花の形からタンポポと同じキク科の植物だと想像がつきますが…
  
 中庭に群生しているこの花は,イワニガナとか ジシバリ(Ixeris stolonifera)と呼ばれる植物です。タンポポとイワニガナの見分け方は,葉のふちの様子です。タンポポは細長く切れ込みが深いためギザギザしています。イワニガナは円い葉がたくさん根本につきます。根が地面に広がり,しばりつけるように見えるため,地縛り(しじばり)と言われるようになりました。
  

花のシャワー

  中庭に白い花をたくさん咲かせている木があります。エゴノキ(Styrax japonica)という樹木です。あと一本北東の門の辺りにあります。
   
 花の散り方が不思議で,花の形のままゆらゆらと散ります。風が吹くと一斉に落ちてきますので,木の下にいると甘い香りのシャワーを浴びているかのようです。
  
 木は将棋の駒に利用されることがあるそうです。また,青い実は昔,石鹸(せっけん)の代わりに使われたようです。熟した実は,火で炒ったコーヒー豆のような形でエゴサポニンという毒が含まれるため食用になりません。

カラスとスズメ(似ている植物パート3)

 鳥類のカラスとスズメは校庭でもよく見られますが,雑草の名前にも「カラス」と「スズメ」が付く物があります。
  カラスノエンドウ(Vicia sativa subsp. nigra ヤハズエンドウとも言われる)とスズメノエンドウ(Vicia hirsuta)です。エンドウという名前の通りマメ科の植物です。カラスノエンドウは,花の後に枝豆のようなさやができ,熟すとだんだん黒くなります。その色がカラスの色と同色であることから名づけられました。スズメノエンドウは,花もさやも小さく小さな鳥に例えて名づけられました。ほかに,カラスウリとスズメウリも大きさを比較して名前が付けられました。
 さて,自然は不思議なもので形は似ているにもかかわらず,カラスノエンドウほど大きくなく,スズメノエンドウほど小さくない種類があります。なじみのある中型の鳥が思い浮かびますか?名づけようとした人も思い浮かばなかったのかもしれません。カラスとスズメの中間であることから,カラスの「カ」とスズメの「ス」を取り,その間を意味する「間(マ)」を使ってカスマグサ(Vicia tetrasperma)と名付けられました。
 戸祭小では,カラスノエンドウは見つけました。スズメノエンドウは,今年別の所で見つけて来て移植しました。カスマグサはまだ見つけられていません。見つけた方はぜひ教えてください。

  
    カラスノエンドウ