★読書の森へようこそ

 「校長の読書日記」をスタートさせます。
  私が日々どんな本を読んでいるのか、何を考えているのかを書き綴りたいと思います。

【第10回】平成24年4月20日(金)
 「僕は君たちに武器を配りたい」(瀧本哲史・講談社1800円+税)
  タイトルはちょっとぶっそうな文章ですが、中身は主に若者たちの職業選択に関することです。
  いま、人気のある職業も20年、30年後にもその状態であり続けられるかというと、そうではない
  というのが著者の主張です。会社人間で居続けるよりも、新たな会社を立ち上げる「イノベーター
  であれ」とのことです。それができる人はいいでしょうが、そうでない人はなかなかつらいです。
  最後に、著者が少年時代に最も影響を受けた本として、吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」
  をあげていたのは驚きました。なぜなら、私にとっても忘れられない本だからです。
  名著は時代を超えて、名著なのだと思います。

【第9回】2/29(水)
 「ご機嫌な職場」(酒井穣・東洋経済新報社1500円+税)
  タイトルにあるように明るい職場を取り戻すための処方箋と紹介されている本です。
  不況が長引く中、業績不振でややもすると暗くなる職場をどうしたら活性化できるのかという
  視点で書かれたものです。
  組織の活性化は資本主義が登場してからの永遠のテーマになっています。
  この本にはそれほど具体的な手法が書かれているわけではありませんが、これまでの先行
  研究を踏まえた組織論が展開されています。
  学校ももちろん組織の一つです。硬直化したマネジメント論だけでなく、ICTも活用して今の
  社会の流れに合った手法をどんどん取り入れるべきだと思います。


【第8回】1/10(火)
 「平成不況の本質」(大瀧雅之・岩波新書700円+税)
  平成不況を雇用と金融の両面から考えるという内容です。
  特に第4章「構造改革とは何だったのか」では、構造改革で何が壊されてしまったのか、明快に
 書かれています。「3 投機の奨励」では、ときどき耳にする「デリバティブ」という債券が、結局は
 ゼロサムゲーム(だれかが儲ければだれかが損をするというしくみ)にすぎないことを明らかにし
 ています。しばらく前から「外国為替取引による投機」で「FX取引」が宣伝されていますが、これも
 同様です。
 「終章」で、著者は今の公的教育が「規格化された人間」を作り出している弊害を説いています。
 いかなる変化にも対応できるようにするためには、この「規格化」は何とかしなければならない
 課題です。

【第7回】11/21(月)
 「桶狭間は晴れ、のち豪雨でしょう」(松嶋憲昭・メディアファクトリー新書740円+税)
  最近はテレビでもテーマとして戦国時代が取り上げられることが多いようです。
 著者は国土交通省で道路行政に長く携わった経歴の持ち主です。
 また、気象予報士の資格も持ち、気象と災害の関係に詳しいそうです。
 そのような経歴を活かして、歴史上の有名なできごとと気象の関係について論じているのが、
 本書です。
  たとえば、「桶狭間の戦い」は織田信長が天下統一へ踏み出す一歩となった有名な戦を取り上げ
 ています。織田方勝利の要因として「雨に乗じた奇襲戦法」がこれまで多く語られてきましたが、当
 時の記録などをもとに、著者は積乱雲の発生を含む急激な気象の変化(局地的な豪雨)が桶狭間
 付近に起きたのではないかと推測しています。
  近年、「奇襲戦法」ではなく、正攻法の戦だったという説も発表されていますが、軍勢の人数など
 を考えると、「正攻法」とは考えにくいところがあります。
  やはり、何らかの気象条件が織田方に味方したと考えるのが、妥当だろうと思います。

【第6回】11/2(水)
 「折れない心を育てる自画自賛力」(原田隆史・メディアファクトリ−新書740円+税)
 
実は、著者と最近あるところで出会う機会がありました。
 「カリスマ体育教師」の触れ込み通り、何事にも熱く取り組む熱血漢でした。
 「教育で日本を変える」という意気込み通り、これから様々なところで活躍される方だと思いました。
 この本はタイトルにあるように、「まずはしっかり自分をほめる」ことが大切だと著者は説きます。
 これによって、自信をもって何事にも取り組めるようになると、その考え方は非常に明快です。

【第5回】8/29(月)
 「大震災でわかった学校の大問題」(大森直樹・小学館101新書700円+税)
 著者は、東京学芸大学の准教授です。また、学校現場にも足繁く通っている教育学者です。
 第3章「原発事故に振り回される子どもたち」では、避難指示は適切だったのか、被ばく線量限度
 緩和の欺瞞などの話が続きます。内容的には非常に重いものです。
 3月12日の福島原発1号機での爆発があってから、政府は避難指示範囲を20キロに広げたので
 すが、それが果たして安全な避難に間に合ったのかどうか。
 第4章「これからの学校はどうあるべきか」も、今後の学校の姿を考える上で、参考になる示唆が
 ありました。

第4回】7/27(水)
  「20代で身につけたい質問力」(清宮普美代・中経出版1300円+税)
  この本の帯のところに、「グーグルより人に聞きなさい」というフレーズが印刷されています。
  今は、確かにグーグルで調べればありとあらゆることを調べることができると思います。
  それでも、やはり人に直に質問することが大切だというわけです。
  それによって、相手との信頼関係も築くことができるし、時には人を動かすこともできるのです。
  
  「質問中心の対話をすれば不毛な対立を避けられる」というのも、まさにその通りだと思います。
  ですから、これからはいかに「いい質問」をすることができるか、これが社会人として成功する
  秘訣の一つに間違いなくなることでしょう。

 「リブート」(福田和代・双葉社1400円+税)
  ここしばらく、この作者の新刊が出るたびに購入しています。
  もともとシステムエンジニアだったこともあって、取材が緻密なのだと思います。だから、ストーリー
  に現実感があります。今回の作品は、本の帯に「企業戦士に贈る」とあるように、日々長時間労働
  をしなければならないサラリーマンの奮闘を描いたものです。

  私自身も理系の大学出身ということもあり、エンジニアとして働く会社員の労働環境の厳しさを少しは
  理解できるつもりです。でも、それにしても過酷だと思います。

  主人公は、ある都市銀行の子会社でシステムエンジニアとして働く人なのですが、銀行のオンライン
  システムに不具合が生じる度に、昼夜関係なく呼び出され、その復旧にあたる姿が描かれているの
  です。今の日本経済はこのような企業戦士の苦闘の上に成り立っていると言えるのでしょう。

  この現実社会の厳しさに、教育はどのような立ち位置で向き合うのか。これからも考え続けていきます。

第3回7/15(金)
 「「富士見」のy」(田代 博・祥伝社新書800円+税)
  日本一の山、富士山を眺められる場所について、実地踏査を踏まえて書かれた本です。
  富士山は古来より「霊峰」として崇められ、信仰の対象にもなっているくらいですから、人々の関心の高い山で
  した。わが栃木県からも、眺めのよい場所がいくつもあるようです。県庁の15階にある展望室からも天気の
  よい冬の晴れた日には、その姿を眺めることができるようです。
  日本人の心のよりどころとも言えるわけですから、道徳教育の教材としても「富士山」はうってつけのものに
  なると思います。必要なデータを集めて、いつか道徳の授業をやりたいですね。

 「花のふしぎ100」(田中 修・サイエンスアイ新書/ソフトバンククリエイティブ952円+税)
  ときどき、1年生の理科の授業を手伝うことがあるのですが、実はそのために読んだ本です。
  「花の香りはどれだけ遠くまでただようのか」では、キンモクセイが実は中国名で「九里香」と呼ばれていることや、
  「三大芳香花」はキンモクセイ、ジンチョウゲ、クチナシであることなど、初めて知ることがたくさんありました。
  私自身理科教師ですが、実は生物のことはあまり知りません。やはり「一生勉強」だと思います。

【第2回】6/27(月)

 「クラウド時代の正体」(白鳥 敬・ベスト新書743円+税)
  この本の著者とは特に親戚関係はありませんが、以前からいくつかの本を読んでいます。
 科学技術ジャーナリストなので、先端技術と私たちの暮らしの関係をわかりやすく説明してくれます。
 「クラウド」という言葉は、テレビのCMでもよく聞く言葉です。
 クラウド・コンピューティングというのは、簡単に言えば、これまで自社で抱えていたサーバーを外部委託する、
 アウトソーシングするということのようです。大きな会社では、これによって経費節減ができるというわけでしょう。
 でも、落とし穴があって、情報セキュリティに大きな課題があるということです。
 最近のソニーの子会社などへのハッカー攻撃を見てもわかるように、情報の安全な管理はどの会社にとっても
 緊急の課題の一つでしょう。
  また、ツイッターやSNSと言ったソーシャル・メディアと呼ばれるものには、常にある種の危険性がつきまとう
 ことを忘れてはならないと警鐘を鳴らしています。

 「学びで組織は成長する」(吉田新一郎・光文社新書700円+税)
  この本はもう10回くらい読んでいます。
  組織を活性化するにはどうすればいいのか、最近はドラッカーが流行していますが、形式的なマネジメントでは
 だめだと思っています。必要なことは、組織にいる人たちが「学び続けられること」こそ一番重要なことなのです。
 特に学校という組織は、児童生徒が学ぶための組織ですから、教師自身が学び続けられるようでないと「いい
 学校」にはなりません。これが、学校という組織をよくする出発点だと思います。


【第1回】6/24(金)

 昨日読み終えた本は、「県庁おもてなし課」(有川 浩・角川書店1600円+税)です。
 恥ずかしい話ですが、この著者の有川さんを最近まで、てっきり男性だと思っていました。本当は女性です。
 でも、描いている内容をみれば、女性にしか書けないところがたくさんあるのに気づかないとは。

 これは、ある県の県庁職員が「おもてなし課」に配属され、それをきっかけに仕事の面白さに目覚め、一人前の職員になっていく姿が
 生き生きと描かれています。もちろん、同じ職場の女性との恋愛話あり、現実に通用する観光プロジェクトの話ありで、飽きることなく
 最後まで一気に読んでしまう一冊です。
 
 栃木県でも最近、観光客が減っているようなので、この「おもてなし課」の発想は使えるかもしれませんね。

 「英雄の書」(宮部みゆき・光文社1200円+税)

 
 宮部みゆきさんという作家は、本当に優れたストーリー・テラーだと思います。
 以前「スナーク狩り」を読んだときも、最後の結末にたどりつくまでの伏線がすごいと思いました。
 この英雄の書は、既存の神話と似たような展開になっているところは、「どこかで読んだような」という感じが否めないですが、 随所に宮部さんらしい仕掛けがあります。中学生には、お薦めの本かも知れません。

 「バランスシートで考えれば、世界のしくみが分かる」(高橋洋一・光文社新書740円+税)

 高橋さんは、元財務省の役人で、2006年には内閣参事官になったほどの、エリートでした。
 ところが、2007年に特別会計の「埋蔵金」を暴露したために、財務省を追われ、現在は嘉悦大学教授。
 バランスシートを手がかりに国の財政の問題点、現在の金融政策の欠点を指摘する手法は実に鮮やかです。
 これを読むと日本の景気がなぜ回復しないのかが納得できます。

 「学校を変える力」(デボラ・マイヤー(北田佳子訳)岩波書店2600円+税)
 
「イースト・ハーレムの小さな挑戦」という副題にあるとおり、大学進学者のほとんどいなかったハーレムの中等学校において、
 劇的な改革を行った校長・マイヤー先生の実践記録です。この本の中には、どうすれば学校がよくなるのか、その手がかりが
 実にたくさん述べられています。なかでも、「学びの原則」はわれわれにとっても大変参考になるものです。
 
   学びの原則・その1 安心して学べる環境であること
           その2 学校の生徒数や規模が適正であること
           その3 コーチ役としての教師
           その4 ものごとを知りたいという欲求が高まったときに人は最もよく学べる
           その5 人は生まれながらにして社会的な存在であり、人との相互作用の中で最もよく学べる

  この原則を見るだけでも、どのような授業を作っていったらいいのかがわかると思います。